遺産分割揉める事例・記事転載

以下記事転載

https://seniorguide.jp/article/1001461.html

遺産相続が裁判までこじれた時の大変さをグラフで見る

 

[2016/1/7 00:01]

家庭裁判所の記録から見る相続の深刻さ

親族が亡くなった場合の遺産相続問題については、「争続」という言葉が作られるほどに世間に広まってきました。

しかし、遺族が遺産の分割を相談する「遺産分割協議」で合意できず、家庭裁判所の調停や審判に持ち込まれ「遺産分割事件」になった際に、どれぐらい手間がかかるものなのかは、あまり伝わっていないようです。

実は、遺産相続でモメて裁判に至った例は、平成26年度には12,577件もありました。しかも、裁判の件数は年々増えています。

ここでは、裁判所が公開している裁判の記録である「司法統計」から、平成26年度の「遺産分割事件」に関わるデータを抜き出し、5つのグラフにまとめてみました。まずは、グラフを御覧ください。

争う遺産は5千万円以下が多い

まず、裁判所で争われる遺産の規模を見てみましょう。

グラフの通り、「5千万円以下」が多く、「1千万円以下」が続きます。

つまり、ちょっとした不動産+預金ぐらいの規模であっても、裁判所に持ち込まれるほどこじれるのです。「ウチは財産がないから大丈夫」ではありません。

相続で争われる遺産は、5千万円以下が多い

争う人数は4人以下が多い

財産を争った人の数は、「3人」が一番多く、「2人」「4人」が続きます。

遺産相続というと、複雑な家庭で、相続人が多い状態を想像しがちですが、実際には4人以下で争われるものが7割を占めます。

相続を争う人数は2人~4人が多い

審理は1年ぐらいかかる

調停などの審理に要する期間は、「1年以下」が一番多く、「6カ月以内」「2年以内」が続きます。

相続税の申告には、「死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」という制限があります。それまでに申告すると、いくつかの優遇処置も用意されています。

しかし、裁判所に持ち込まれるほどこじれていると、数年に渡って争い続けている例も少なくありません。

「1年以内」が一番多いが、「2年以上」も少なくない

4~5回ぐらいの審理は覚悟する

裁判所の審理に1年間は覚悟するとして、その間に何度ぐらい審理が行なわれるのでしょう。

ほぼ半数の審理は、4回以下で終わります。5回まで入れれば6割になりますから、だいたい4~5回の出席を覚悟しておけば良いでしょう。

しかし、中には21回以上という例もあり、泥沼化した場合にはとめどがありません。こうなると、弁護士を代理人に立てたとしても、その費用が心配です。

審理は4~5回で終わることが多いが、20回以上という例もある

調停が成立するのは「6割」

これだけの期間と労力を費やして争う調停ですが、最終的な結果はどうなるのでしょう。

実際に調停が成立するのは6割に留まっています。どちらかが争いを止める「取下げ」が続きます。

3番めに多い「認容」というのは裁判用語で「容認」という意味です。これは、調停が成立せず、審判になった場合に「申し立てが適法で遺産相続をすべき」と判断したという意味です。

「調停・審判」の結果。調停が成立するのは6割ほど

不動産持ちは遺言状を準備をしよう

5つのグラフで見てきたように、遺産相続がこじれて「遺産分割協議」がまとまらず、裁判所の調停や審判に持ち込まれると、大変なことになります。

少なくとも「1年近くの期間」と「4~5回の出席」が必要であり、「2~3人の当事者」が顔を突き合わせてお互いに主張しあうわけです。

6割の確率で、無事に調停が成立したとしても、元通りのお付き合いに戻ることは難しいでしょう。

遺産相続がこじれるのを防ぐのに有効な手段は、「法的に有効な遺言状」と「相続財産の目録」を用意することです。

とくに、分割しにくい不動産を遺産として残す可能性がある場合は、無料法律相談会や弁護士などを利用して、遺言状の準備を進めましょう。

人間関係で揉める遺産分割・記事転載

Money&Investment 以下記事転載

たたる人間関係のこじれ 遺産分割で調停沙汰に 

 

2014/12/28

 Aさんは同居していた父を急病で亡くした。遺言は残されていなかった。遺産は築30年の家とわずかな預金くらい。家は自分が相続して住み続けたいとAさんが弟、妹に伝えたところ、売却・換金して均等に分けるべきだと反対された。何度も話し合ったが折り合わず関係はこじれるばかり。どうなってしまうのか。

 https://style.nikkei.com/article/DGXMZO81203650S4A221C1PPE001?channel=DF280120166591&style=1

遺産分割について相続人の間で話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の「調停」や「審判」という仕組みを利用することになります。家裁に調停を申し立てるとまず分割対象の遺産を確定します。評価額を定めたうえで誰がどれだけ受け取るかを決めます。調停委員が双方の言い分を聞いたり、提出された証拠を参考にしたりしながら、落としどころを探ります。

 決着は容易ではありません。例えば生前に親と同居していた子供と、別居していた子供との間では、親から聞いたという話の内容がよく食い違います。遺産に不動産が含まれる場合は特にやっかいです。売却に反対する遺族がいれば、他の遺族に代わりのお金を払う代償分割という手当てが求められるかもしれません。

 弁護士の白木麗弥さんによると、調停の協議では「最初から双方が疑心暗鬼になっている場合が多い」そうです。当事者たちの配偶者らが横から口出しして混乱することもあります。調停は1回当たり2~3時間、月1回程度開かれ、半年から1年をかけて合意を目指すのが一般的です。調停案を当事者のどちらかが受け入れず不調となった場合、本格的な裁判と同様の審判に移行します。

 家裁の審判官が証拠などを基に事実を認定して審判を下します。1年ほどかかることもあり、当事者にとって大きなストレスです。審判の結果がどうなるか「過去の例に基づいてある程度予測できる」と白木さんはいいます。それでも双方の感情がこじれきっていて決着がつかず、高等裁判所に至る例もあります。

 遺産分割トラブルは年々増えています。家裁に新たに持ち込まれた遺産分割調停は2013年に1万2878件と10年前に比べ3割増えました。遺産額が5000万円以下というケースが調停などの成立件数の75%を占めます。金額の多寡よりも人間関係のこじれが紛争にいたることが多いのです。審判になった例も2000件を超えました。

 紛争を避けるためには遺言書が有効ですが、書き残す必要性を感じない親も多いようです。子供の立場からすると、教育費や住居費など出費が多い時期に相続が起きれば、少額の遺産でも貴重ですから、争いを引き起こしやすいのです。困ったときは専門家に相談するのがいいでしょう。弁護士会の法律相談や日本司法支援センター(法テラス)や自治体の無料相談を活用できます。

 

[日本経済新聞朝刊2014年12月24日付